日本シリーズ総括〜その1・投手起用
2006.01.24 Tuesday
週間ベースボール11・14号「知将/森祇晶の視点」
西武監督時代に3連覇を含む6度の日本一に輝いた森氏の今シリーズの総括のポイントは3つです。
1、投手起用
2、データー分析力
3、手堅い作戦
氏の言葉にはもちろん、20日以上も実戦から遠ざかった勢いの違いが冒頭にでるが、それ以上に大きな問題は、阪神がレギュラーシーズンの戦い方と、いわゆる短期決戦での戦い方をまったく区別できていなかったことを指摘されてます。3試合連続10失点がそれをよく表していると…
第一戦、井川が1対1から5回に3点を奪われながら6回もそのまま続投に、何故ベンチはここまで井川に執着したのか?投手起用は、いかに相手の勢いに“歯止め”をきかせるかが短期決戦では重要になる。相手投手と比較し、何点までが許容範囲なのかを読み取り、交代機を探っていく。ここは間違いなく交代して追加点を阻止すべき場面だった。井川は6回に李にホームランを浴び、5失点。ようやく交代と思って、次に出たのがルーキー橋本だ。これは試合を諦めたのかと思われても仕方がない。長いレギュラーシーズンなら、貴重な中継ぎ陣を温存するが、負ければ次のない日本シリーズ。この起用には逆転を伺う姿勢も、2戦目以降を見据えた戦略的な部分さえも感じることはできなかった。1イニング、あるいは一人の打者でも、藤川やウイリアムスといった勝負どころでその力が必要になるであろう投手をなげさせてもよかったのではないか。レギュラーシーズンでいくら結果を残した投手でも、この独特の雰囲気の中でいきなり実力を発揮するのは極めて難しい。試投という意味でも彼らに登板する場を与えていれば、負けの中でも意義のある試合となったはずだ。
第二戦も同様。先発安藤は5回までを2点に抑えたものの、6回にサブローにツ−ランを打たれ、4点差、さらに1点を取られたところで交代。ロッテ先発の渡辺俊の投球を考えたら、3点以上はやれない展開だった。2点で食い止めている段階で、前倒しにしてでも藤川、ウイリアムスを持ってきて、追いかける体制を整えるべき。終盤だから藤川、あるいはウイリアムスではない。こういう場面だからこそ彼らの力が必要なのである。それなのに5点を取られるまで代えず、しかも次に登場したのが江草。5点を取られたからもう諦める―ファンや守っている野手がそう感じてもおかしくない。
第三戦になって、1対3と2点リードされた場面ながらようやく藤川に出番が回り、最初の6回は3人で抑えたが、これまでの温存のツケは7回になって出た。無死二、三塁で大塚に代わって代打・フランコを迎えた場面だ。阪神サイドにとって、欲しいのは三振だけ。ロッテは守備のいい大塚を代えてまで追加点を取りに来たが、藤川の球威を考えればフランコは大塚に比べて三振を取りやすい打者である。ここを抑えれば流れが変わったかもしれない。しかし、フランコを2球で追込みながら、その後、矢野が要求したのは5球続けてストレート。結局最後に投じたフォークボールを見逃され四球となった。ツ−ワンとなった時点でフォークでもよかったと思うが、実戦から遠ざかり、いわばぶっつけ本番の藤川は変化球の制球に苦しんでおり、矢野には要求する自信がなかったのだろう。ピンチを広げて代打橋本にタイムリーを浴び、5点目を献上。ここで藤川に代わって出てきたのが桟原。結果はヒットと四球で二者を出し、福浦に痛恨の満塁弾。第一戦と同じことを繰り返すが、フランコ、橋本とつながるところでウイリアムスという選択肢はなかったのか。結果はどうであれ、それが最善の手を尽くすということではないのだろうか。3戦連続の10失点はみな5点以降の投手起用によって広がってしまった。そこでしっかり食い止めていたら、逆転の可能性も十分にあったはず。リーグ優勝するチーム同士、個々の選手の力は拮抗している。チームとしてのつながり、ベンチがどういう戦いをしたかという姿勢が明暗を分けた。
…続く
☆頑張れ阪神タイガース☆